ピアノレッスンがADHD(注意欠如多動症)のある子どもへ与える影響とは?

注意欠如多動症(ADHD)
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はじめに

そろそろお子さんに習い事を始めさせようかと考えていませんか?ADHD(注意欠如・多動性障害)は、集中力の維持や衝動性のコントロールに困難を抱える発達障害です。

習い事を選ぶにあたっても、子どもに合っているかどうか悩むこともあるでしょう。

今回は、その選択肢の一つとしてピアノ学習をご紹介します。ピアノは単なる趣味にとどまらず、お子さまの集中力や自己規律の向上に役立つ可能性があるのです。

「この子は音楽をやっている時に楽しそうだな」と思った方は、一度ピアノも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。この記事では、ピアノをおすすめする理由や影響、そして始める際のポイントをお伝えします。

お子さまの個性や好きなことを育み、新しい可能性を発見するヒントとなれば幸いです。

ピアノをおすすめする理由

達成感と自尊心の向上

ピアノ学習は、お子さんに素晴らしい達成感と自信をもたらします。新しい曲を少しずつ練習し、完成させていく過程で、「できた!」という小さな喜びを日々積み重ねていきます。一つの曲を最初から最後まで弾けるようになった時の誇らしい笑顔は、きっと忘れられない思い出になるでしょう。

さらに、発表会でみんなの前で演奏する経験は、大きな成長の機会となります。緊張もあるかもしれませんが、演奏後の拍手や褒め言葉は、お子さんの心に深く刻まれ、かけがえのない自信となります。

この「頑張ればできる」という経験は、ピアノだけでなく、学校生活や将来の様々な挑戦にも活かされる大切な力になるでしょう。ピアノを通じて育まれる達成感と自信は、お子さの可能性を大きく広げるきっかけとなるかもしれません。

ピアノで広がる感情表現

ピアノは、お子さんの感情表現を豊かに育む素晴らしいツールです。言葉では伝えきれない微妙な気持ちや感情を、鍵盤を通じて音に乗せて表現できるようになります。

嬉しい時は明るく軽やかに、悲しい時は静かに深く、そんな心の動きを音楽で表現することで、お子さんの感情理解と表現力が自然と育まれていきます。

音楽は、心のバランスを整えるツールにもなります。イライラした時やモヤモヤした気持ちの時に、ピアノを弾くことで心を落ち着かせる方法を見つけられるかもしれません。これは、感情をコントロールする力を身につける良い機会となります。

さらに、この豊かな感情表現は、他者の感情を理解する力にもつながります。音楽を通じて様々な感情を体験することで、友達の気持ちにも敏感になれるかもしれません。

ピアノは単なる楽器ではなく、お子さんの感情表現と理解を広げる窓口となります。音楽の世界で、お子さんの感性を育んでみませんか?きっと、新しい自分との出会いがあることでしょう。

音楽の与える影響に関する研究

研究内容

ADHDのある子どもと音楽の関係を調べる研究についてご紹介します。この研究はイギリスの教育機関に携わるエヴァ・マーガレット・ワイルドとグラハム・フレデリック・ウェルチによって行われました。音楽に取り組んでいる時と、そうでない時の子どもの行動の変化を観察し、音楽体験がどう影響するかを調べました。

研究方法

・ ADHDのある2人の男の子が対象
・ 学校での音楽の授業を細かく観察
・ ビデオカメラで撮影し、30秒ごとに子どもたちの様子を記録
・ 合計5,961回の観察
・ 不注意、過活動、衝動性の強さレベルを評価

研究結果

観察を行った結果、音楽が子どもへ与える影響について次のようなことがわかりました。

①行動の安定性

音楽活動中は、ADHDの典型的な行動(多動や衝動性)が減少することが確認されました。音楽を演奏している間、参加者はより落ち着いており、指示に従いやすくなることが見られました。これは、音楽が提供する構造やリズムが、行動を安定させる助けとなるためと考えられています

音楽は感情を表現する手段としても機能し、ADHDを持つ子どもたちが自分の感情を音楽を通じて表現することで、内面的な緊張や不安を和らげることができるとされています。これにより、感情のコントロールが向上し、結果的に行動が安定することが期待されます

②集中力の向上

研究では、ADHDを持つ子どもたちが音楽活動に参加しているとき、特に演奏や創作に積極的に関与している際に、注意力が向上し、周囲の刺激に対する反応が穏やかになることが観察されました。音楽に没頭することで、他の気を散らす要因から離れ、集中力が高まる傾向があることがわかりました。

Wilde, E., & Welch, G., 2022. Attention deficit hyperactivity disorder (ADHD) and musical behaviour: The significance of context. Psychology of Music, 50, pp. 1942 – 1960.

Attention deficit hyperactivity disorder (ADHD) and musical behaviour: The significance of context - Consensus
Key takeaway: 'ADHD-related symptoms can be reduced or absent when individuals engage in music, suggesting that effective, context-sensitive pedagogy can integr...

始める際のポイント

教室ごとの特徴を見極めること

一言にピアノ教室と言っても、教室ごとの特色は様々です。コンクールで受賞することを目指す教室や、未就学児のお子さんを教えるのが得意な教室、好きな曲を弾くことをメインとする教室など、それぞれの得意分野や教室の雰囲気などがあります。

教室には、体験レッスンが受けられるところもありますので、お子さまに合った教室はどんな教室か、お子さまの様子を見ながら考えていくことが大切です。

グループレッスンより、個人レッスン

レッスンの中には、複数の生徒で同時に行うグループレッスンもあります。友達と楽しくコミュニケーションを取れたり、他の生徒の演奏を聴いてモチベーションが上がるといったメリットがあります。

しかし、複数人でレッスンを行うことで集中力が乱されたり、全員のペースに合わせなければいけない場面でストレスを感じることがあるかもしれません。


お子様のペースでじっくり音楽を学びたい場合は、やはり個人レッスンがおすすめです。他の生徒からの刺激もないため、集中力も保ちやすくなります。

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さいごに

ADHDのあるお子さまにとって、ピアノ学習は多くの可能性を秘めています。集中力の向上や感情表現の豊かさ、達成感など、様々な面での成長が期待できます。

しかし、最も大切なのはお子さま一人ひとりの個性や興味に寄り添うことです。ピアノが合う子もいれば、別の活動の方が向いている子もいるでしょう。無理強いすることなく、お子さまの反応を見ながら、楽しく続けられる環境を整えていくことが重要です。

ADHDは個人差もあり、一人ひとり必要なサポートが異なります。必要に応じて、医療専門家や教育の専門家にも相談しながら進めていくと良いでしょう。

ピアノ学習を通じて、音楽が新たな自己表現の手段となることを願っています。

その他、発達障害のあるお子様へ向けた習いごとについてはこちら⬇️

▼経歴
音楽大学ピアノ科卒業。音楽教育やリトミックについても専修し知見を深める。
▼資格
中学校教諭 高等学校教諭一種
▼趣味
ストリートピアノでの演奏 音楽鑑賞