はじめに
「ピアノの練習、なかなか集中できなくて…」「すぐに飽きちゃって続かない」「親としてどうサポートしたらいいのかわからない」
ADHDのあるお子さんを持つ保護者の方から、よくこのような声を耳にします。確かに、ADHDの特性がある場合、長時間じっと座って練習を続けることは課題となります。でも、それは決して「ピアノに向いていない」ということではありません。
むしろ、音楽に対する豊かな感性や独創的な表現力を持つお子さんが多いのです。大切なのは、お子さんの特性に合わせた練習方法を見つけること。
この記事では、ADHDの特性を活かしながら、楽しくピアノを続けるための具体的な方法をご紹介します。一つずつ試していただき、お子さんに合った練習スタイルを見つけていきましょう。
①環境からの刺激を減らす!〜集中しやすい環境づくり〜
ADHDのあるお子さんは、視覚、聴覚など外からの刺激に敏感です。練習中に目に入ったものが気になってしまったり、他の音で集中力が切れることが無いよう、まずは環境づくりから始めましょう。
環境づくりのポイント
* 練習室の整理整頓
周りには練習に必要なものだけ置きましょう。
* 不要な物は視界に入らないようにする
おもちゃや余計なものが目に入らないよう、布を被せるなど工夫しましょう。
また、楽譜は今弾く曲だけ譜面台に置きましょう。
* 外部からの音を遮断
外の音が気になる時は窓を閉めましょう。カーテンも遮音効果のあるものがあります。
必要に応じてノイズキャンセリングヘッドホン使用しましょう。
* スマートフォンなど、電子機器は別室に
テレビは消して、携帯や音の鳴る時計は別室に移しましょう。
家族で協力して静かな時間を作りましょう。
このように、環境を整えるだけでも集中力や練習の質がぐっと上がります。ADHDのお子さんは、周りの様々な刺激に敏感な分、音や景色をより豊かに感じ取れる特徴があります。その感性を活かしながら、楽しくピアノと向き合える空間を作っていきましょう。

②時間を区切って楽しく練習!~ポモドーロ・テクニックの活用~
長時間同じことを続けるのは誰にとっても簡単ではありません。特にADHDのあるお子さんは、その特性から「いつまで練習を続ければいいの?」という不安を感じやすいものです。そこで効果的なのが、時間を小分けにする「ポモドーロ・テクニック」という方法です。
具体的な進め方
* まずは15分だけ練習!→その後、5分間の休憩タイム
* タイマーを置いて、残り時間が一目でわかるようにする
* 休憩時間は思いっきり体を動かしたり、好きな遊びをしたりしてリフレッシュ
* 1日4回(合計1時間)を目指してみましょう。無理のない範囲でOK!
このように時間を区切ることで、「あと○分頑張れば休憩できる!」という見通しが立ちやすくなります。また、短い時間なら「やってみよう!」という気持ちも生まれやすいですよ。
✨実践のポイント✨
・最初は15分が長いと感じたら、10分や5分から始めてもOK
・タイマーは音が優しいものを選ぶと安心
・4セットにこだわる必要はありません。その日の調子に合わせて柔軟に

③見える化で楽しく上達!~練習計画を立てよう~
「今日は何から始めよう?」「どこまでできたかな?」そんな気持ちを形にできる、楽しい練習計画の立て方をご紹介します。目で見て確認できる計画表があれば、練習がもっと楽しくなりますよ。
実践アイデア
* 好きな色の付箋を使って、曲を小さな部分に分けましょう
(例:ピンクは出だし、黄色はサビ、青は終わりの部分)
* 練習したいことを、チェックリストにしてみよう
(例)
□ 右手の練習
□ 左手の練習
□ ゆっくり両手で
□ だんだん速く
* できたところにシールや花丸、好きなスタンプを押そう!
* 1週間の記録をカレンダーに残すのもいいですね
練習した記録が残ると、後から見返したときの自信にもつながります!
✨実践のポイント✨
・色分けは自分の好きな色で!楽しく取り組める工夫を
・チェックリストは細かすぎない程度に。達成感が大切
・できなかったところは翌日に回してOK。無理せず楽しく
・保護者の方は、できたことを一緒に喜んであげましょう
このように「見える化」することで、「今日はここまでやった!」という達成感が味わいやすくなります。また、「明日はあのページをやろう!」という楽しみも生まれますよ。

④「サンドイッチ方式」で楽しく練習!~好きな曲と課題曲を交互に~
ピアノ練習で大切なのは、楽しく続けられること。そこでおすすめなのが、好きな曲と練習が必要な曲を交互に演奏する「サンドイッチ方式」です。まるでおいしいサンドイッチを作るように、練習を組み立てていきましょう。
サンドイッチ方式の進め方
1. はじめは大好きな曲を演奏!
(例:アニメの曲やポピュラー曲など、すらすら弾ける曲)
2. 真ん中で新しい曲に挑戦
(例:レッスンで習っている曲、まだ完璧には弾けない曲)
3. 最後にまた好きな曲で締めくくり
(例:得意な曲や思い出の曲)
まずは「ピアノの前に座る」ことが大切!練習をスタートするハードルを下げることで、気持ちよく練習が始められます。最初は億劫な練習でも、ピアノの前に座ってみれば案外やる気が出てくるものです。新しい曲の練習も、前後に楽しみがあるから頑張れます。また、最後に好きな曲を弾くことで、気持ちよく練習を終えられます。
✨実践のポイント✨
・好きな曲は複数用意しておくと、気分で選べて楽しい
・新しい曲は無理のない範囲で。少しずつでOK
・その日の気分で曲順を変えても大丈夫
・新しく習った曲が弾けるようになったら「好きな曲」に昇格!
・保護者の方は、お子さんの選曲を尊重してあげましょう
このように、楽しい曲と新しい曲をバランスよく組み合わせることで、ピアノ練習がもっと楽しくなりますよ。一つひとつの曲に「わくわく」や「できた!」という気持ちを感じながら、音楽を楽しみましょう。

さいごに
ADHDの特性は、決して音楽学習の妨げになるものではありません。むしろ、音楽に対する豊かな感性や創造性につながることも多くあります。これらの方法を参考に、ご自身に合った練習方法を見つけていただければ幸いです。
ピアノ練習を通じて得られる達成感は、ADHDのある方の自己肯定感を高め、他の活動にも良い影響を与えることでしょう。諦めずに、一歩一歩前進していきましょう。
【追記】 専門家からのアドバイスや医療的な判断が必要な場合は、必ず医師や専門家に相談することをお勧めします。この記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の状況に応じて適切な対応は異なる場合があります。
