ダウン症のある子どもにピアノレッスンが与える影響とは?

ダウン症候群
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はじめに

ダウン症の子供を持つ親として、習い事について何を選べばよいか悩むことがあると思います。一般的な習い事としてピアノ教室があります。ピアノレッスンは、子供たちにとってさまざまな影響があります。今回は、ダウン症の子どもにピアノや音楽がもたらす影響について、研究結果を用いてお話したいと思います。

精神的健康の向上

子どもたちにとって、精神的な健康はとても重要です。そして、音楽は心に潤いを与えてくれる素敵なものです。ピアノを習うことで、子どもたちは美しいメロディーに身を委ね、日々の喧騒から離れてひと時の安らぎを感じられるでしょう。

ピアノに夢中になっている間は心配事を忘れて、音符に集中できます。そうすることで、ストレスから解放されてリフレッシュできるのです。たくさんの楽しい経験を重ねることで、ダウン症の子どもたちもピアノを通して心の健康を維持でしょう。

音楽に触れる時間を持つことで、こどもたちの豊かな心が育まれていくのではないでしょうか。ぜひ、音楽を通した心の癒やしを子どもにも体験してもらいたいものですね。

姿勢や運動能力の向上

ピアノを習うと、指先を動かすトレーニングができるだけでなく、その他の体の使い方も自然と学べます。

ピアノを弾く際は、背筋をピンと伸ばして正しい姿勢をキープする必要があります。レッスンを重ねていくうちに、無意識のうちに良い姿勢が身に付いていくでしょう

また、両手を広げたり、肘を上げ下げしたりとさまざまな体の動かし方を覚えていきます。つまり、ピアノを続けることで、体の柔軟性が高まっていくというわけです。

こうした基礎体力作りは、ダウン症の子どもたちの運動能力の発達に良い影響を与えてくれるはずです。音楽を楽しみながら、自然とトレーニングができるなんて一石二鳥ですよね。

音を奏でる喜びに加えて、体力作りの効果もあるなら、ピアノ習うメリットは大きいと言えそうです。音楽を通して心身ともに健やかに育っていくことが期待できるでしょう。

コミュニケーションスキルの向上

ダウン症の子どもたちは、コミュニケーションにおいて言語能力の発達がゆっくりであったり、文章の構成が難しいケースがあります。しかし、ピアノレッスンは、先生や他の生徒たちとのコミュニケーションを通じて、コミュニケーションスキルを向上させることができます。また、ピアノ教室ではさまざまな年代の生徒と接する機会があり、発表会やグループレッスンを通じてコミュニケーションの機会が増えていくことが期待できます。

ピアノレッスンは、ダウン症の子どもたちのコミュニケーション能力を伸ばす良い機会になります。

レッスンでは、先生や他の生徒たちと音楽を通して会話を重ねていきます。言葉を上手く選んで表現する練習ができるので、自然とコミュニケーションスキルが磨かれていくでしょう。

さらにピアノ教室には、幅広い年代の生徒が通っています。発表会やグループレッスンでは、いろんな人と触れ合う貴重な場が用意されているのです。演奏を共有しながら、人間関係を築いていけるのがピアノの魅力です。

感情の表現力・認知度が向上

音楽活動に関する研究

スペインのアルメリア大学の教育研究チームが、ダウン症候群の方々の感情の発達支援を目的として、音楽を活用した興味深い研究を行いました。

20歳から45歳のダウン症候群の参加者8名を対象に、計8回の音楽活動プログラムが行われました。プログラムでは、歌を聴いたり声を出したり楽器を演奏したりする様々な音楽活動が展開されました。

また、喜び、怒り、悲しみなど基本的な感情ごとに、ストーリーと歌が用意されていました。参加者は音楽に触れながら、感情を体感していきました。

研究結果

結果として、音楽を取り入れた活動が、ダウン症の学生たちの感情への理解や感情表現の力を高め、総合的に感情の発達を後押ししたことが分かりました。

最初は「感情」という曖昧なものの認識が難しかった参加者も、活動を重ねるごとに感情をより適切に理解できるようになっていきました。結果として、音楽を取り入れたアプローチがダウン症の学生の感情の発達を促進する有効な手段であることが実証されました。

音楽の力は感情の分野でも発揮できることが示された今回の取り組みは、ダウン症に限らず感情育成の新しい可能性を切り開くことになるでしょう。

Castellary-López, M.、Muñoz, J.、Figueredo-Canosa, V.、Ortiz-Jiménez, L. (2021)。 ダウン症患者の感情発達のための介入計画の実施。 環境研究と公衆衛生の国際ジャーナル、18 https://doi.org/10.3390/ijerph18094763.

自己肯定感の向上

ピアノレッスンでは練習を重ねて成果を出すことができ、演奏成功体験を積むことで自己肯定感を高めることができます。例えば流行りの曲を弾いたりすると、同級生が「すごい!知ってる曲だ!この曲弾けるんだ!」と駆け寄ってくることもあるようです。このような、「人に聴いてもらえている」という体験から、自己肯定感を高めることにつながることがあります。

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さいごに

以上のように、ダウン症の子供たちにもピアノレッスンはさまざまな良い影響が期待できます。子ども達がピアノを通じて音楽に親しむことで、自信や感情の表現力が育まれるでしょう。

子どもたちはそれぞれ、好みや興味に違いがあります。「この子は音楽に興味がありそう!」、「楽器を触っている時はなんだか楽しそう!」と感じる方は、一度体験レッスンに足を運んでみても良いのではないでしょうか。

▼経歴
音楽大学ピアノ科卒業。音楽教育やリトミックについても専修し知見を深める。
▼資格
中学校教諭 高等学校教諭一種
▼趣味
ストリートピアノでの演奏 音楽鑑賞