ピアノの楽譜が読めない?LDのある子どもへのアプローチ

LD(学習障害)
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はじめに

学習障害(LD)のあるお子さまをお持ちの方の中には、
「うちの子はどうやら音楽が好きみたい・・・。ピアノを習わせてみたいけど、楽譜を読むのは難しいかもしれない。」といったようなお悩みをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

学習障害の特色にはいくつか種類がありますが、特に読字障害(文字や文章を読むのが苦手)のある子どもは、文字や記号がくっついて見えたり、滲んで見えたりすることがあるため楽譜を読むことが大きな障壁になる可能性があります。

しかし、適切な指導方法とサポートがあれば、楽譜を読めなくてもピアノを十分に楽しむことができます。LDの子供一人ひとりに合わせた工夫次第で、音楽を最大限に味わえるはずです。

ここでは、読字障害を持つ子どもに向けた、ピアノの楽しみ方やアプローチをご紹介します。視覚や聴覚、身体の感覚など、さまざまな側面から音楽に親しむ方法を解説していきます。

視覚的サポートの活用

LDの子どもの中には、文字や記号の認識が苦手な子もいます。そうした生徒には、楽譜の視覚的サポートが有効です。例えば以下のようなアイデアがあります。

楽譜に色分けをする
音符の上に音名を書き入れる
イラストで音の高さ・リズムを表す
鍵盤に色付きシールを貼る

このように、音と視覚情報を結びつけることで、楽譜を見なくてもピアノが弾けるようになります。教師と一緒になって、一人ひとりに合った方法を見つけていくことが大切です。

音源教材の併用

楽譜を読めなくても、CDなどに収録された曲を耳から覚えることはできます。オーディオ教材を活用すれば、読譜能力に頼らずにピアノの練習ができるでしょう。

実際のレッスンでは、先生が曲の一部を弾いてみせ、それを耳で覚えさせるなどの指導が考えられます。旋律をヒントに指を動かすだけでも、音楽をつくりだせます。耳を済ませて音程感を養うことも重要です。

読字が苦手な生徒にとって、聴覚に頼る指導は有効な手段です。音楽は聴覚体験でもあり、その力を最大限に活かすべきですね。

数字譜やリズム譜の活用

一般的な楽譜の代わりに、音階に数字を当てはめた数字譜を使う方法もあります。数字は文字よりも分かりやすいと考えられています。

また、リズム譜ではリズムだけに特化したシンプルな譜面を用います。音の高低は気にせず、リズムに集中することで楽に曲を覚えられるケースもあります。

楽譜を使うことが難しい場合、代わりのアイデアを考えることが大切です。数字やリズムで曲の構造を理解できれば、達成感を味わえるはずです。

身体を使った学習アプローチ

LDのある子どもは、身体を動かすことを通して学ぶことも効果的だと言われています。動きや手順に課題があるケースもあり、実際に指を動かしながら覚える必要があるのです。

指のストレッチや両手の動かし方など、体感から入ることで音楽をより深く理解できるでしょう。指の動きに合わせてリズミカルに体を揺らす、といった遊びも音楽への親しみを生み出すかもしれません。

身体を使う学習法は、LDを持つ子どもにとって大きな味方になるに違いありません。

歌うことからのアプローチ

もしピアノの演奏が難しい場合、歌うことから始めるのも一つの方法です。LDのある方は視覚や聴覚が発達していることが多いと言われており、メロディーを歌うことで曲に親しめるかもしれません。

とにかく楽しむことから始め、次第に曲に合わせてリズムを手拍子したり、歌いながらピアノの鍵盤を押してみるのです。

一気にピアノを弾けと求めるのではなく、まずは音楽に触れ、楽しみを見出せる体験を大切にしましょう。歌から始めることで徐々に音楽の世界へいざなわれていくはずです。

実際に、身体を動かしたり歌ったりすることから音楽に親しむことができる、「リトミック」という学習方法もあります。

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さいごに

LDのある子どもへの指導では、無理のないペースと寛容な態度が何より大切です。できた!をたくさん誉めて自信を持たせ、焦らずに地道に取り組む。そうすることで音楽を心から楽しめるようになるはずです。

楽譜から入るか、音から入るか、子どもに寄り添いながら最適なスタイルを見つけていきましょう。教師は的確な助言と、あきらめない姿勢で子供をサポートすることが求められます。

ピアノを通して得られる喜びは、子どもの心に大きな影響を与えることでしょう。子どものペースで、音楽の魅力に出合えるようサポートしていきたいものです。

楽譜が読めなくてもピアノを楽しむことはできます。一人ひとりに合った学習スタイルを見つけていけば、音楽の喜びを存分に味わえることでしょう。指導する側も楽譜にこだわらず、子供が音楽になじめる工夫を心がけましょう。失敗を恐れずに、ゆっくりと子どもと一緒に歩んでいけば、新しい音楽体験の世界が広がるはずです。

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▼経歴
音楽大学ピアノ科卒業。音楽教育やリトミックについても専修し知見を深める。
▼資格
中学校教諭 高等学校教諭一種
▼趣味
ストリートピアノでの演奏 音楽鑑賞